FXの自動売買を調べると、「VPSが必要」という説明に必ず出会います。サーバーの契約や、パソコンのつけっぱなしを想像して、始める前に諦めかけた人もいるのではないでしょうか。
実は、VPSが必要になるのは、MT4とEAを使う方式が中心です。証券会社の取引画面で注文を設定するリピート系の自動売買は、VPSを借りる前提がありません。
この記事では、方式による違い、ループイフダンとトラリピの特徴、始める前に知っておきたいリスクと確認の習慣をまとめました。読み終えるころには、自分に合う方式を選び、無理のない一歩を踏み出せます。
VPSなしで自動売買ができるかは「方式」で決まる
「自動売買にはVPSが必要」という説明を目にして、月々の費用やサーバーの設定を思い浮かべ、始める前から疲れてしまった人は少なくないはずです。
ただ、VPSが要るかどうかは自動売買そのものではなく、どの方式を選ぶかで決まります。ここでは、VPSが必要になる理由と、必要にならない方式の違いを、順を追って整理します。
読み終えるころには、「自分はVPSを借りる側なのか、借りなくてよい側なのか」を、自分の言葉で説明できるようになります。専門用語は出てくるたびに短く説明するので、FXに詳しくなくても大丈夫です。
方式の違いを知らないまま調べ続けると、必要のない契約に進んだり、止まりやすい環境で始めてしまったりしがちです。ここで土台を押さえておけば、あとの比較や判断が楽になります。
では、VPSなしという選択は、そもそも本当に成り立つのでしょうか。
VPSなしでも自動売買はできる?答えは選ぶ方式しだい
結論から言うと、VPSなしでも自動売買は始められます。ただし、すべての方式でできるわけではありません。
FXの自動売買は、大きく2つの方式に分けると整理しやすくなります。1つは、MT4という取引ソフトに「EA」と呼ばれる自動売買プログラムを入れて動かす方式です。もう1つは、証券会社の取引画面で注文を設定し、同じ注文を繰り返してもらう方式です。
MT4は、対応するFX口座を開けば無料で使えるソフトです。EAは自作するほか、公開されているものを導入することもできます。使うEAを自分で選び、動かす環境も自分で整える方式、と言い換えられます。
どちらの方式も、あらかじめ決めたルールに沿って、システムが自動で売買する点は同じです。人が画面を見て判断する裁量取引とは、ここが違います。
VPSの話が出てくるのは、主に前者です。後者は各社の取引システムで設定する形なので、自分でMT4を動かし続けるという前提がありません。
この2つを分ける軸は、自分でプログラムを動かし続けるのか、用意された注文の仕組みを使うのかの一点です。
後者は、環境を整える作業がない代わりに、使えるのは各社が用意した注文の仕組みの範囲です。自由度と手軽さは、引き換えの関係にあります。
たとえば、他の人が作ったEAを使いたい人や、自分で売買ロジックを組みたい人は、前者になります。値幅と数量を決めて、あとは任せたい人は、後者が向いています。
VPSが必要になるのは、MT4を動かし続けるパソコンが要るから
VPSが必要になる理由は、MT4でEAを動かすには、MT4を起動したままにしておく必要があるからです。
為替市場は、土日を除いて24時間動いています。MT4で自動売買をするなら、EAを設定したあとも、MT4を止めずに動かし続けなければなりません。自宅のパソコンをつけっぱなしにする方法も、理屈のうえでは可能です。
VPSは「仮想専用サーバー」の略です。FXの文脈では、データセンターで24時間動いている自分専用のWindowsパソコンを、月額料金で借りるサービスを指します。
「仮想」とは、1台の高性能なサーバーを複数に分け、その1つを自分だけで使う仕組みのことです。他の利用者と1つの環境を分け合う共用サーバーとは違い、自分専用の環境として使えます。
そこにMT4を入れてEAを動かせば、自宅のパソコンの電源を切っても、取引を続けられます。外出先からスマホで取引状況を確認できる点も、利点の1つです。
FX向けのVPSは、MT4やMT5を動かせるスペックが最初から用意され、料金も月額固定で分かりやすいと解説されています。ただし、借りただけでは自動売買は始まりません。MT4の導入やEAの設定は、自分で行います。
つまりVPSは、特別な取引ツールではなく、電源を落とさないパソコンの借り先です。この役割が分かると、VPSが要るかどうかは「MT4を動かし続けるパソコンが自分に必要か」という問いに言い換えられます。MT4を使わない方式なら、そのパソコン自体が要りません。
証券会社の画面で設定する自動売買は、何をしてくれるのか
証券会社の自動売買は、あらかじめ決めた条件で注文を出し続ける機能です。EAのような売買プログラムを、自分で用意する必要はありません。
代表的なのは「リピート系」と呼ばれるタイプです。指定した値幅の中に、新規注文と決済注文を等間隔で並べ、成立したら同じ注文をまた出す、という動きを繰り返します。
利用するには、各社で口座を開き、取引画面やアプリから設定します。アイネット証券のループイフダンは、スマホアプリの中で操作が完結すると案内されています。売買システムの名称は、買いから入るか売りから入るかなどが分かる名前です。
マネースクエアのトラリピには、ストラテジストが考えた運用戦略から選んで設定できる「戦略リスト」機能があります。自分で一から値幅や本数を決めなくても始められる入口がある、という位置づけです。対象も為替だけでなく、株価指数のCFDに広がっています。
マネースクエアは、トラリピを、利用者に代わって24時間働き続ける注文方法として説明しています。画面を見ていない時間も、設定した注文が動くことを前提にした設計です。
なお、リピート系はテクニカル指標を売買の判断材料にするわけではないため、厳密にはシステムトレードとは別物と説明されることもあります。
EA型と違い、「どのソフトを、どのパソコンで動かし続けるか」を考える場面は出てきません。やることは、取引画面で条件を決めて稼働を始めるところまでです。
VPSを使わず自宅のパソコンでMT4を動かすと起きやすいこと
VPSを使わずにMT4を動かす場合は、自宅のパソコンを24時間動かすことになり、止まるリスクと維持の手間を自分で引き受けることになります。
解説記事では、課題として、電気代、パソコンへの負荷、停電、通信の切断、メンテナンスやセキュリティの管理が挙げられています。パソコンのフリーズも、取引の機会を逃す原因として指摘されています。
どれも頻繁に起きることではありません。ただ、自動売買では、起きた時間に自分が画面を見ていないのが前提です。気づいたときには止まっていた、ということが起こり得ます。
たとえば、外出中にルーターが不調になり、MT4がサーバーにつながらなくなったとします。家に帰るまで、そのことに気づけません。
パソコンがスリープに入ると、MT4も止まる場合があります。更新による再起動も、止まる原因になり得るため、電源まわりの設定の見直しが必要です。
VPSを使えば自宅のパソコンの電源を切れるため、電気代の面でも負担を減らせると説明されています。
判断のコツは、費用だけで比べないことです。VPSは月額がかかりますが、自宅のパソコンでも電気代と手間がかかり、止まったときの影響は自分で受け止めることになります。
こうした理由から、MT4でEAを使う人にとってVPSは、あると安心な追加費用というより、止まる原因を減らすための選択肢として語られます。VPSなしで続けるなら、この手間とリスクを許容できるかどうかが、判断の分かれ目です。
自分に合う方式を決める3つの判断基準
方式を選ぶ基準は、次の3つに絞れます。当てはまる数が多いほうが、いまのあなたに合う方式です。
- 自分で売買ロジックやEAを選び、試したい人は、MT4とEAの方式です。VPSか、常時動かせるパソコンが前提になります。
- 値幅と数量を決めるだけで始めたい人は、証券会社のリピート系が向いています。
- 日々の確認をスマホで済ませたい人も、リピート系が候補になります。運用状況をアプリで確認できるサービスがあるためです。
たとえば、平日は仕事で夜にしか画面を見られない会社員なら、確認がスマホで済む方式が合います。EAの検証に毎晩時間を使える人なら、EAの方式にも向いています。
迷う場合は、「EAを使いたい具体的な理由があるか」を自分に聞いてみてください。理由がはっきりしないなら、VPSを借りずに始められる方式から入るほうが、手間も費用も小さく済むでしょう。
EAの方式を選ぶ場合は、そのあとに「VPSを借りるか、自宅のパソコンを動かし続けるか」の選択が待っています。この記事の続きは、VPSなしで始められる方式が軸です。
会社によっては、実際のお金を使わずに画面の操作を試せるデモ取引が用意されています。方式で迷ったときの、操作感を確かめる手段です。
方式は、あとから変えることもできます。最初から完璧に選ぼうとせず、いまの目的に近いほうで試すという考え方で問題ありません。
VPS不要の代表的な自動売買「ループイフダン」と「トラリピ」
証券会社の自動売買は名前の種類が多く、「どれも同じに見える」という声をよく聞きます。実際には、注文の組み立て方や、向いている相場、費用のかかり方に違いがあります。
ここでは、国内で名前がよく挙がる「ループイフダン」と「トラリピ」を取り上げ、仕組みの共通点と違いを具体的に見ていきます。どちらも、MT4とEAを使う方式とは別の、各社の取引画面で設定するタイプです。
特徴を知っておくと、口座を開く前に「自分の使い方に合うか」を判断でき、始めてから「思っていたのと違った」となる失敗を減らせます。表で並べた比較や、業者選びの確認ポイントも用意しました。
そもそも、この2つが属するリピート系は、どんな考え方で動いているのでしょうか。
値幅に注文を並べて繰り返す「リピート系」とは
リピート系は、価格が上下に往復するたびに、小さな取引を積み重ねる仕組みです。ひとつの取引で大きく狙うのではなく、成立の回数で積み上げる考え方です。
たとえば、ドル円が150円から152円の範囲で動くと見て、50銭ごとに買い注文を置いたとします。価格が下がって買いが成立し、少し戻ったところで決済されれば、同じ買い注文がまた待機します。
決済のたびに同じ注文が出し直されるため、往復の回数が多いほど、取引の回数も増えていきます。注文を置いていない価格帯では、新しい取引は成立しません。
この仕組みは、価格が一定の範囲を行き来するレンジ相場で働きやすいとされています。反対に、一方向に動き続けるトレンド相場は苦手、というのが比較記事での定番の指摘です。
たとえば価格が下がり続けると、50銭ごとに置いた買い注文が次々に成立します。戻りがなければ決済されず、保有している取引だけが増えていきます。トレンド相場が苦手とされる理由は、まさにこの動きです。
リピート系の機能は、ループイフダンとトラリピだけではありません。比較サイトでは、楽天FXの「リピート注文」、トライオートFX、FXブロードネットのトラッキングトレードなども、同じタイプの機能として並べられています。
トラリピは、このタイプの元祖として紹介されることが多いサービスです。ここでは、そのトラリピと、初心者向けとされるループイフダンの2つに絞って見ていきます。
ループイフダン(アイネット証券)の特徴
ループイフダンは、アイネット証券が提供するリピート系の自動売買で、売買システムを選んで稼働させる形のサービスです。
比較記事によると、対応する通貨ペアは21ペアで、南アフリカランド/円、トルコリラ/円、メキシコペソ/円といった高金利通貨も含まれます。最低取引単位は1,000通貨で、少額から始められるとの紹介です。
買いから入るシステムと、売りから入るシステムは、同時に動かすこともできます。相場が上下どちらに動いても対応しやすい運用ができる点が、特徴の1つです。
コスト面では、スプレッド(買値と売値の差)が「原則固定」の通貨ペアがあるとされています。一方、解説記事では、スプレッドが広めで、トレンド相場に弱い点がデメリットという指摘です。
高金利通貨では、金利差調整額(スワップポイント)を受け取れる場合があります。ただし、受け取りから支払いに変わることもあり、将来にわたって保証されるものではありません。
もとは、ひまわり証券が提供していたサービスです。解説記事によると、同社は2018年10月27日にループイフダンの提供を終え、事業はアイネット証券に承継されました。これから始める場合の選択肢は、アイネット証券とされています。
ひまわり証券は、いまも仕組みを応用した別の自動売買を提供していますが、アイネット証券のループイフダンとは別のサービスです。名前が似ているため、口座を開く会社を取り違えないようにします。
トラリピ(マネースクエア)の特徴
トラリピは、マネースクエアが特許を取得している注文方法で、値幅の中に複数の注文を設定し、成立後も繰り返し発注する仕組みです。
設定では、値幅、注文を置く本数、買いか売りかの方向を決めて仕掛けます。ループイフダンは売買システムを選んで動かす形ですが、トラリピは値幅や本数を自分で決める場面があります。
費用面では、取引手数料は無料で、コストの中心はスプレッドです。スプレッドは変動制で、比較サイトでは広めな点がデメリットとして挙げられています。
「決済トレール」という機能が、もう1つの特徴です。通常の決済は一定の利幅で行いますが、トレールを使うと、値動きが上がり続ける場面で決済価格も一緒に上がっていきます。ただし、トレールの値幅を決めるのが難しい点は、注意が必要です。
公式アプリの案内では、細かな利益をコツコツ積み重ねる運用スタイルが特徴として紹介されています。上昇と下落の両方で利益を狙う「ダブルリピートイフダン」や、設定の手間を減らした「らくらくトラリピ」といった派生機能もあります。
提供会社のマネースクエアは、SBIグループの一員です。中長期の外貨運用をコンセプトに、低レバレッジの推奨などに取り組んできたと説明しています。2026年2月からは、トラリピの運用でJALのマイルがたまるプログラムも始まっています。
2つの違いを表で比べて選ぶ
2つを比べるときは、提供会社、注文の組み立て方、通貨ペア数、取引単位、コストの出方を見ると、違いが整理できます。
次の表は、比較サイトなどで確認できた範囲をまとめたものです。数値は変わる場合があるため、口座を開く前に、各社の公式サイトで最新の内容を確認してください。
| 項目 | ループイフダン | トラリピ |
|---|---|---|
| 提供会社 | アイネット証券 | マネースクエア |
| 注文の考え方 | 買い・売りなどの売買システムを選んで稼働 | 値幅・本数・方向を決めて設定(戦略リストから選ぶ方法もある) |
| 対応通貨ペア | 21ペア | 18ペア |
| 最低取引単位 | 1,000通貨 | 1,000通貨 |
| コストの特徴 | スプレッドが原則固定の通貨ペアがある | 取引手数料は無料。スプレッドは変動制 |
表のとおり、最低取引単位は同じで、違いは注文の組み立て方とコストの出方に表れます。
表に入れていない項目として、スワップポイントや、通貨ペアごとのスプレッド、キャンペーンがあります。これらは日々変わるため、比べたい時点の数字を、各社の公式サイトで見る必要があります。
選ぶ順番の目安は、取引したい通貨ペアに対応しているか、設定の手間が自分に合うか、コストの出方を許容できるか、の3つです。
売買システムを選んで手軽に始めたいならループイフダン、値幅や本数まで自分で決めたいならトラリピ、というのが仕組みから見た目安です。どちらかを勧めるものではなく、自分の使い方に近いほうを選ぶための整理です。
口座を開く前に確認したい、業者選びのポイント
口座を開く前には、金融庁への登録と、預けたお金の保全方法を確認してください。自動売買が目的でも、お金を預ける相手の安全性は変わらないからです。
国内でFXを扱う業者は、金融商品取引業の登録を受けています。公式サイトの下部には、商号、登録番号、金融先物取引業協会などの加入協会が記載されているので、そこで確かめてください。
保全方法は、会社の資産と顧客の資産を分けて管理する「信託保全」などの案内で確認します。アイネット証券は信託契約による信託保全を行っていると紹介されており、マネースクエアも、分別管理信託を業界に先駆けて導入したと説明しています。
「放置するだけで稼げる」「必ず利益が出る」と断定する宣伝をしているツールには、近づかない判断も必要です。トラリピの公式ページでも、利益を保証するものではないと明記されています。
海外の無登録業者から勧誘を受けることもあります。国内業者のサイトには「無登録の海外所在業者による勧誘についてのご注意」というページが設けられており、登録の有無は金融庁の公式サイトでも確認できます。
自動売買では、システム障害のときの対応も気になるところです。ヒロセ通商のサイトのように、「システム障害時の対応に関する基本方針」を掲載している例があります。
取引の前には、「契約締結前交付書面」が交付されます。取引のリスクや留意点が書かれているため、申し込む前に目を通してください。
VPS不要でも知っておきたいリスクと運用の習慣
VPSを使わなくて済むことと、損失の心配がなくなることは、まったく別の話です。手間が減る分、「任せきりでも大丈夫」と思い込みやすい点には気をつけたいところです。
ここでは、完全な放置が勧められない理由、損失が出る仕組み、資金の置き方、毎日の確認の仕方を整理します。最後に、始める前のチェックリストと、始めた直後に見るポイントも用意しました。
リスクを知ったうえで始めた人と、知らずに始めた人とでは、相場が荒れたときの落ち着きがまるで違います。読み終えるころには、自分の資金と生活に合わせた「止めどころ」を決められる状態になります。
ここで扱うのは、特別な知識がなくても、今日から実行できることばかりです。
設定したあとは、本当に何もしなくてよいのでしょうか。
「VPS不要」は「完全放置OK」ではない
VPSが不要でも、設定したら二度と見なくてよいわけではありません。トラリピの公式ページでも、安定した運用にはレンジを外れないことが大切で、定期的な設定の見直しが必要と説明されています。
同じ公式ページは、仕掛け方によっては多額の資金が必要になること、設定したレンジの中でも損失が出る場合があることにも触れています。
運用の注意点としては、経済指標や金利差にも目を配ること、ロスカットの水準を常に把握しておくことなどが、解説記事で挙げられています。
見直しのきっかけは、日々の値動きではなく、相場の流れが変わったかどうかです。たとえば、価格が設定した値幅の下端や上端に近づいてきたときは、続けるか、止めるか、設定を組み直すかを考える場面です。
見直す頻度は、あらかじめ決めておくと、日々の値動きに振り回されません。たとえば、毎週末に1回、設定した値幅と現在の価格の位置を見比べる、といった決め方があります。
設定を組み直すときは、範囲を広げるほど注文の本数が増え、必要な資金も大きくなりやすい点には注意が必要です。仕掛け方によって多額の資金が必要になるという公式ページの説明とも重なります。
見直した日と理由は、メモに残しておくと便利です。あとから振り返ったときに、どの判断が結果につながったのかを確かめられます。
VPSがない分、サーバーの管理から解放されますが、相場と設定のズレに気づく役目は、これまでどおり自分の仕事です。
サーバーで動いても損失は出る:ロスカットと元本超過のしくみ
自動売買は注文を出す手間を減らすだけで、損失の可能性を減らしてくれるわけではありません。FXは、預けた証拠金を上回る損失が出る可能性のある取引です。
松井証券、GMOあおぞらネット銀行、DMM FXの説明書にも、証拠金を上回る損失が生じることがあると書かれています。金融庁も、FXを、証拠金を上回る損失が出るおそれのあるリスクの高い取引と整理しています。
「証拠金」は、取引のために預けるお金のことです。少ない証拠金で大きな金額を動かせる「レバレッジ」があるため、値動きの影響が大きくなります。損失が証拠金を上回ったときは、不足分を追加で入金する必要が出ることもあります。
金融庁は、レバレッジの高い取引について、ロスカットが十分に機能せず利用者が思わぬ損害を受けるおそれがあることなどを、課題として挙げてきました。
スワップポイントを支払う側になった場合も、損失の要因になります。金利の低い通貨を買い、金利の高い通貨を売る取引が、これにあたります。
損失が大きくなる前の安全装置が、ロスカットです。損失が一定の比率以上になると、自動的に反対売買をして取引を終える仕組みです。
ただし、ロスカットは万能ではありません。松井証券の説明では、為替が急激に動いたときやスプレッドが広がったときは、意図した取引ができなかったり、元本を超える損失が出たりする可能性があるとされています。
GMOあおぞらネット銀行の説明書には、注文した価格と実際に約定した価格がずれる「スリッページ」が、相場の急変時に起こりうると書かれています。リピート系でも、こうしたズレは避けられません。
発注前にリスクを試算し、資金の置き方を決める
資金の置き方は、「いくらまで下がっても耐えられるか」から逆算して決めます。稼げる額から考えると、無理な設定になりやすいためです。
トラリピのPC取引ツールには、発注前に取引にかかるリスクを試算できる「リスクを試算」ボタンがあります。入力ガイドも付いており、初心者でも迷わず発注できると紹介されています。
手計算の目安として、ドル円が150円のとき、1,000通貨の想定元本は15万円です。個人の必要証拠金は想定元本の4%以上とされているため、最低でも6,000円ほどの証拠金が必要です。
ただし、これは取引を成立させるための最低額です。含み損に耐えるための余裕資金とは別物です。計算が難しいときは、ツールの試算結果を使います。
試算の結果は、設定を決める前の材料にします。数字を見て不安になったら、本数を減らしたり、範囲を狭めたりして、納得できる形に調整してください。
生活費や、近いうちに使う予定のお金は、証拠金に回さないのが基本です。相場が荒れたときに、自分の判断で止められなくなるからです。
取引単位も同じ考え方で決めます。最低取引単位が1,000通貨のサービスなら、最初は最小の単位で動かし、値動きの感覚をつかんでから増やす方法が取れます。
止める基準も、始める前に決めておきます。たとえば、「証拠金が3割減ったら、いったん稼働を止めて設定を見直す」のように、数字で決めておくと迷いません。
スマホで毎日どこを見ればいいか
毎日の確認は、「止まっていないか」と「損益の推移」の2点で足ります。細かな値動きを追う必要はありません。
アイネット証券のアプリには「口座分析」画面があり、口座全体の残高推移や、売買システムごとの損益推移をグラフで見られます。ログイン後すぐに状況をつかめ、詳細はワンタップで一覧にできると案内されています。
トラリピのアプリには、成立した取引を日ごとに確認できる「成立カレンダー」があります。毎日コツコツと積み上がる成果が、ひと目で分かる画面です。
マネースクエアのアプリは、実際の値動きとトラリピの設定を重ねて確認できるチャート完結型と紹介されています。設定した範囲と現在の価格の位置関係を、目で見て確かめられます。
見る順番は、稼働しているか、残高と含み損はどれくらいか、止める基準に近づいていないか、の3つです。
プッシュ通知も心強い味方です。アイネット証券のアプリは、急な相場変動を知らせる機能を備えています。通知が来たら、アプリを開いて、残高と建玉(まだ決済していない取引)の状況を確認します。
確認する時間帯も決めておくと、習慣になります。たとえば、朝の通勤前に1回、夜に1回だけ見る、というルールです。
見る回数を増やしすぎると、含み損のたびに設定をいじりたくなり、自動売買にした意味が薄れます。気になるときは、回数を増やすのではなく、通知の設定を見直すのが先です。
始める前のチェックリストと、始めた直後に確認すること
始める前の確認は、次の5つに絞れます。すべて「はい」と答えられたら、準備が整っています。
- 登録番号と保全の方法を、公式サイトで確認した
- 端末の電源を切ったときの注文の動きを、サービスのFAQや説明書で確認した
- 使う資金の上限と、止める基準を数字で決めた
- 発注前のリスクの試算や、説明書のリスクの欄に目を通した
- 毎日見る時間と、確認する画面を決めた
2つ目は、特に確かめておきたい項目です。各社は、画面を見ていない時間も注文が動くと説明していますが、端末の電源を切ったときの細かな動作は、サービスごとの説明に従って確かめてください。
準備ができたら、最初に動かすサービスを1つに絞り、最小の取引単位で設定します。複数を同時に始めると、どの設定が結果に影響したのか、分からなくなるためです。
始めた直後の確認は、「想定どおりに注文が並んでいるか」「通知を受け取れる設定になっているか」「取引の履歴を見られるか」の3点です。注文が並ぶ価格帯は、画面で自分の目で確かめてください。
最初の数日は、毎日アプリを開き、注文が成立するたびに画面がどう変わるかを観察します。仕組みが体感できると、その後の確認も落ち着いてできます。
1か月ほど動かしたら、成立した回数、含み損の大きさ、通知が来た回数を振り返ってみてください。そのうえで、注文の本数や範囲が自分の許容範囲に合っているかを見直します。
まとめ
FX自動売買でVPSが要るかどうかは、方式で決まります。MT4でEAを動かす方式は、MT4を動かし続けるパソコンが必要になるため、VPSか、自宅のパソコンの常時稼働が前提です。
証券会社が提供するループイフダンやトラリピのようなリピート系は、各社の取引画面で注文を設定する形で、VPSを借りる前提がありません。ただし、レンジを外れた相場に弱い点や、証拠金を上回る損失の可能性といったリスクは残ります。
VPSがなくても、設定の見直しとスマホでの確認は欠かせません。次の3つから、今日のうちに進められます。
- 判断基準を使って、自分に合う方式を1つに絞る
- 候補にしたサービスの公式サイトで、登録番号、説明書、FAQを確認する
- 最小の取引単位で動かし、最初の数日は毎日アプリで状況を確かめる
手間を減らすことと、任せきりにすることは別です。仕組みとリスクを知ったうえで始めれば、VPSなしでも、無理のない自動売買を続けやすくなります。